最終話「釜山に行っちゃった」最終話「一緒に入るでしょ?うちはいつも夫婦で入るんだけど。」 「あ、いや。今日はねえ。」 と遠慮する揺を尻目に ビョンホンは 「えっ、そうさせてもらう?」 なんてノリノリに言っている。 するとスヨンが「じゃ、私がオッパとはいるっ!」と言った。 それを聞いた揺は、 急に頭に血が上り相手が子供だということを忘れてむきになって 「じゃ、スヨンはお姉ちゃんと入ろうねぇ~」 というと有無を言わさず引きずるように スヨンをお風呂に連れて行った。 お風呂の中でスヨンが言った。 「今日、オッパとアジュンマの部屋で寝ていい? オモニはダメだって言うの。 スヨンまだおねしょしちゃうから。」 うつむいて寂しそうに告白するスヨンを見て、 揺は昔の自分を思い出していた。 (そういえば結構大きくなるまで世界地図書いていて毎朝恥ずかしかったなぁ。) 「そっかぁ~。おねしょかぁ・・。 実はお姉ちゃんもスヨンぐらいの頃はよくおねしょしてたんだ。 同じだね。気にすることないよ。 大丈夫。今はしてないし。 あんな素敵なだんなさんと結婚できたから。 じゃ、今夜は夜中起こしてあげるからおねえちゃんと一緒に寝ようか。」 そういいながらスヨンを急に身近に感じ、 子どもとしてではなく 分が昔そうだったように普通に接すればいいことに気がついた揺は、 急に気が楽になった。 そして揺とスヨンは友達になった。 「オンニ、おねしょのことはオッパには秘密だよ。」 「もちろん、女の約束ね。」 揺はそういうと指きりのポーズをした。 お風呂から出てきた女二人は急に仲良しになっていて 間に挟まれたビョンホンは、 何が起こったのか全くわからなかったが、 揺の表情から戸惑いが消えたことに気がつき何だか嬉しい気分だった。 そして事の成り行きは今夜二人っきりになったらゆっくり聞いて・・・とほくそ笑んでいた。 そんな時 「今日は3人で川の字で寝ましょうね。あなた。」 揺は今までの悪戯を倍にして返したぞという満面の笑みを浮かべながら、 ビョンホンに向かってそう言った。 「あら、本当にいいのかい?お邪魔しちゃって」 と心配するヒョンジャ。 「あっ、いいんですよ。 もう1年毎晩二人っきりで過ごしてますから。 ご心配なく。ねえ、あ・な・た。」 そういうと他の人に気付かれないように、 揺はビョンホンに舌を出してウインクした。 頭を抱えるビョンホン。 「ちょっともったいなかったかなぁ~」 揺はほんの少し後悔した。 「もう、寝た?」 スヨンが寝入ったのを見計らったかのようにビョンホンは揺に話しかけた。 「ううん。何だか目が冴えちゃって。あなたは眠くないの?」 「うん、僕も目がランランだよ。」 そういうとお互い顔を見合わせて笑った。 「今日は楽しかった~。スリル満点の旅行だよ」 そういうとビョンホンは悪戯っぽく笑った。 「本当にハラハラドキドキの連続だったわ。 あなたと結婚したら毎日こんなだったら身体がもたないわ。 ・・・でも楽しかったけどね。」 笑いながら半ばあきれ返ったように揺が言うと、 ビョンホンはすくっと起き上がり布団の上に座ると、 揺にも起き上がって座るように言った。 そしてスヨンの上からそっと手を伸ばし、 揺の頬を両手を包み目をしっかりと見つめると 「愛してるよ。」と一言いい、 揺を引き寄せながら 自分は身体を思いっきり伸ばすような体勢で揺にキスをした。 優しいいつものキスだった。 そしてもう一度揺の顔を見つめ額を合わせると 「君のすべてが可愛くて愛おしくて」 とつぶやきながら額、目、鼻、あごにゆっくりキスをした後、 今までしたことのないような熱く情熱的で狂おしいほどのくちづけをした。 最初は突然でためらっていた揺もだんだん夢中になっていく。 全身から力が抜けて自分が舞い上がっていくのがわかった。 そして揺の力が全部抜けたその瞬間「ドーン」 もともと無理な体勢だった二人はバランスを崩し布団の上に倒れこんだ。 音と振動にびっくりしてスヨンが目を覚ました。「?!」 「何か地震みたい。もう大丈夫だから。さっ、寝ようね。」 慌てた揺はそういうとスヨンに布団を掛け上からやさしくとんとんと叩いた。 「揺、韓国には地震ないんだけど・・まぁいいか。」 とビョンホン。 「まあ、いいよ。何でも」と揺。 二人は声を殺して大笑いした。 これからはずっと一緒なのだから、何も焦ることはない。 お互いにそう思いながらまた夢の中でも会う約束をして横になる。 最高にスリリングで楽しくて幸せな二人の夜はこうして更けていった。 次の日の朝。とてもいい天気だった。 チス夫婦とスヨンに見送られながらビョンホンと揺はチス宅を後にした。 出発する時、最後にスヨンが笑いながら揺に耳打ちした。 「昨夜のことは内緒にしておいてあげるね。」 「えっ、見てたの?」 ちゃんちゃんおしまい。 |